大阪大学発の研究シーズ3件が「第3回KSAC-GAPファンド」に採択 ― OUVCが硫黄ポリマー・心不全治療薬・骨粗鬆症治療デバイスの事業化を支援
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(以下「OUVC」)が事業化支援を行う大阪大学の研究シーズ3件が、関西スタートアップアカデミア・コアリション(以下「KSAC」)の「第3回 KSAC-GAPファンド」に採択されたことをお知らせします。
採択された研究シーズは、以下の3件です。
- 外科的骨粗鬆症治療デバイスの開発(大阪大学大学院医学系研究科 右近裕一朗講師)
- 持続可能な社会構築に貢献する硫黄ポリマーの研究開発と事業化(大阪大学大学院理学研究科 小林裕一郎助教)
- 新規作用機序をもつ画期的心不全治療薬の開発(大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科 髙島成二教授)
OUVCは、大学発の研究成果を社会実装し、新産業創出につなげることを目的に、投資・事業開発・人材支援等を通じて大学発スタートアップの創出と成長を支援しています。 今回の採択を契機に、3件の研究シーズについて創業支援をさらに推進し、将来的なスタートアップ創出につなげてまいります。
1. KSAC-GAPファンドについて
KSAC-GAPファンドは、事業化の可能性やグローバル展開が期待される大学の研究開発課題に対して資金を提供し、事業化に向けた支援を行うプログラムです。採択案件には起業支援人材が配置され、外部機関とも連携しながら、研究ステージに応じた支援体制が構築されます。また、Demo Day等を通じて、金融機関、ベンチャーキャピタル、大手企業等との連携機会の創出も目指されています。
今回、OUVCが支援している大阪大学発の3件の研究開発課題が、同ファンドの第3回採択課題として選定されました。いずれも、大学の卓越した研究成果をもとに、社会課題の解決と新たな産業創出を目指すものです。
2. 採択課題の概要と社会的インパクト
(1) 外科的骨粗鬆症治療デバイスの開発(右近裕一朗 講師)
大阪大学大学院医学系研究科の右近裕一朗講師は、整形外科学、骨粗鬆症、骨代謝、骨老化、再生医療等を専門領域とする研究者です。
今回採択された研究開発課題は、骨粗鬆症患者の骨折予防を目的とした外科的治療デバイスの開発です。研究開発計画では、初回の大腿骨骨折手術時に、反対側の骨粗鬆性大腿骨へ骨強化用マテリアルを注入・充填し、骨強度を高める医療機器の実用化を目指しています。既存の薬物治療では、継続管理や骨折予防効果の面でなお課題が残されており、本技術は「低侵襲・短時間・単回」で実施できる新たな治療選択肢として、再骨折予防、健康寿命の延伸、介護負担の軽減、医療・介護費の抑制に貢献する可能性があります。
(2) 持続可能な社会構築に貢献する硫黄ポリマーの研究開発と事業化(小林裕一郎 助教)
大阪大学大学院理学研究科の小林裕一郎助教は、高分子・超分子科学を専門とし、機能性硫黄ポリマー材料の創製に取り組んでいます。
本研究は、石油精製等で発生し、十分に活用されていない硫黄を高機能材料として再資源化することを目指すものです。廃硫黄を原料とした高機能ポリマー材料として、ゴム、接着剤、自己修復材料、次世代二次電池、吸着材等への応用が期待されています。
従来の硫黄ポリマー合成は高温プロセスや硫化水素発生等が社会実装上の課題でしたが、本技術は室温合成や環境負荷低減を特徴とし、硫黄ポリマーの実用化を阻んできた課題の解決を目指しています。 これにより、未利用資源の有効活用、CO₂排出量の低減、新素材開発の高度化に貢献することが期待されます。
また、本研究で培われる材料創製技術は、マテリアルズ・インフォマティクス時代において「理論上望ましいが実際には作れない材料」を実際に創製するプラットフォームとなり得るものであり、サステナブル素材、電池材料、モビリティ、電子材料等の幅広い産業領域への展開が期待されます。
(3) 新規作用機序をもつ画期的心不全治療薬の開発(髙島成二 教授)
大阪大学の髙島成二教授は、循環器内科学、創薬、タンパク質生化学等を基盤に、心不全をはじめとする疾患に対する新たな治療薬開発に取り組んでいます。
大阪大学大学院生命機能研究科の医化学研究室では、「時代を変える治療薬を開発する」ことを掲げ、独創的なタンパク質生化学的手法や臨床研究室との連携を通じて、first-in-classの創薬開発を進めています。
髙島教授は、心不全、心筋症、ATP合成酵素、創薬、エネルギー代謝等を主要な研究テーマとしており、心不全治療標的の同定や創薬展開に関する研究にも取り組んでいます。心不全は高齢化に伴い患者数の増加が見込まれる重要疾患であり、既存治療では十分に対応できない病態も少なくありません。
今回の採択課題は、新規作用機序に基づく治療薬開発を目指すものであり、既存薬とは異なるアプローチにより、将来的には、心不全治療の選択肢拡大、患者QOLの向上、医療費負担の軽減に資する可能性があります。
3. 今後の期待
大学の研究成果を社会実装へつなげるためには、研究開発そのものに加え、知財戦略、事業開発、規制対応、資金調達、人材確保、産業界との連携が不可欠です。
OUVCは、これらの研究成果が研究室にとどまらず、社会に届く製品・サービス、そして世界に通用する大学発スタートアップへと発展するよう、引き続き事業化支援を推進してまいります。