第23回「業界展望-創薬」 リベンジに挑む遺伝子治療

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この分析担当者の執筆により、随時、サイエンスレポート「業界展望」をお届けしております。今回は第23回です。


 

リベンジに挑む遺伝子治療

 遺伝性疾患やがんなど、遺伝子の変異が病気を引き起こす原因なのならば、究極の治療はその変異を修正することだ。遺伝子治療は、十分な有効性や安全性を確立できず、長らく基礎試験に立ち戻ることを余儀なくされてきた。しかし、ここにきて開発が活発化している。遺伝子治療は、その大きな期待に応えることができるだろうか?

■遺伝子治療の分類
 遺伝子治療には人体から細胞を取り出して、標的遺伝子を組み込んだウィルスベクターや非ウィルスベクターにより遺伝子導入を行い、再び人体に戻すEx vivoと、直接それらのベクターを人体に投与するIn vivoとがある (図1)。前者の場合は、さらに患者自ら取り出した細胞に遺伝子操作を行う「自家」と、汎用細胞や他人であるドナーから取り出した細胞に遺伝子操作を行う「他家」とがある。Ex vivoは造血幹細胞やリンパ球など標的細胞を体外に取り出すことが可能な細胞に適用が限られるが、適切に遺伝子治療がなされた細胞の品質をチェックできるため安全性に優れる。In vivoはおもに筋肉細胞、神経細胞など体外に取り出すことができない細胞に用いられ、手技としてはより簡便な反面、導入効率や安全性が課題となる。

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■遺伝子治療薬にもグローバル品が登場
 重篤な免疫不全症候群患者を対象にした遺伝子治療が実施されたが、使用したレトロウィルスベクターの挿入変異により白血病が引き起こされたのは20年余り前。これが遺伝子治療の停滞期を招いた。しかし、導入ベクターの改良などが進み、ここにきて承認薬も増えるなど再び活発化してきている。2019年1Qまでに承認された遺伝子治療薬は12品目あるが、2016年以降のStrimveils、Luxturna、Kymriah、Yescarta、Imlygicなどは、それ以前のものとは異なりグローバルに展開している (表1)。 加えて最近では、ゾルゲスマが2019年5月にFDAで承認され、2.3億円という高額薬価が付いて世界一高い薬として話題を呼んだ。In Vivo/Ex vivo別の頻度をみてみると、目立った偏りはなく様々なアプローチがなされていることがわかる(図2)。

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■ゲノム編集技術の応用
 最近注目を浴びるCRISPR/Cas9やCRISPR/Cas3といったゲノム編集技術であるが、まだこれらの技術を用いた医薬品は承認されていない。ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療は究極の根本治療とも言えるが、従来の方法に加えて、これからの遺伝子治療の新潮流となるのは間違いない。

[OUVC投資部第三グループ調査役 上平昌弘(医学博士)]

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