当社は「大阪大学の研究成果を活用した事業」を行うベンチャーを投資対象としております。投資候補先の事業が対象とする業界の動向や市場性、成長性等については、当社は、専門的見地から分析を行う担当者を配置して投資検討を行なっています。
この分析担当者の執筆により、随時、サイエンスレポート「業界展望」をお届けしております。今回は第12回です。
新しいモダリティ(核酸医薬のsiRNA)がついに2018年に実用化された。創薬の幅を広げ、これまで治療が困難であった疾患に対する創薬が今後も期待される。この新規のモダリティを含め、半数以上の新薬はバイオベンチャーが起源である。日本は起源国としては米国に次ぐ2位であるが、ベンチャーを起源とするものはなかった。2018年の新薬を概観する。
2018年に日米欧のいずれかで初めて承認された薬剤は60品目である。疾患領域別に見ると、がんが最も多く、次いで感染症、免疫系疾患の順である(図1)。モダリティでは小分子化合物が約60%を占める(図2)。モノクローナル抗体とリコンビナント蛋白を加えると、90%近くになる。数はまだ少ないが、新たなモダリティが増えているのも確かである。2018年の新薬で特筆すべきは、核酸医薬の一つであるsiRNA医薬が世界で初めて承認されたことである。医薬品業界にとっては記念すべき年となった。この技術がNature誌に発表されたのは1998年である。実用化のための20年の歳月は、バイオベンチャー企業の成功に関して多くの示唆を含んでいるように思われる。
図1
新薬のオリジンを見たものが図3。バイオベンチャーが起源となったものが最も多く、57%である。大手製薬企業と中小製薬企業は、それぞれ22%と13%である。このように、バイオベンチャーが創薬で重要な役割を演じている。国別に見ると(図4)、米国に存在する企業・大学等が圧倒的に多くの新薬を創出しており、日本は2位である(日本の6品目は中小製薬企業が創出)。
創薬は困難な時代になったと言われるが、昨年は有望な新薬が過去最高のレベルで登場した。その原動力はベンチャーである。
図3
[OUVC投資部第三グループ調査役 西角文夫]