第22回「業界展望-創薬」 2019年の新薬:市場構造に変化の兆し

当社は「大阪大学の研究成果を活用した事業」を行うベンチャーを投資対象としております。投資候補先の事業が対象とする業界の動向や市場性、成長性等については、当社は、専門的見地から分析を行う担当者を配置して投資検討を行なっています。

この分析担当者の執筆により、随時、サイエンスレポート「業界展望」をお届けしております。今回は第22回です。


 

2019年の新薬:市場構造に変化の兆し

 2019年に登場した新薬を見ると、疾患領域、創出国、オリジン、モダリティのどれをとっても変化が窺える。主流だったがんや感染症の治療薬が存在感を低下させ、昨年の新薬の適応疾患は多岐に渡っている。モダリティも多様な技術が活用されている。この流れを作っているのは日本の製薬企業とベンチャー、これが新潮流だ。

 2019年に日米欧のいずれかで初めて承認された薬剤は58品目で、昨年より2品目少ない。疾患領域別に見ると、がんが最も多く、次いで精神神経系、血液疾患の順である(左下の図)。精神神経系治療薬が比較的多いことは2019年の特徴の一つである。モダリティでは低分子化合物が約60%を占める(右下の図)。モノクローナル抗体と抗体薬物複合体は、それぞれ4品目と3品目。新しい技術が着実に実用化されている。遺伝子治療なども含め、モダリティの種類が増えたことも特徴。

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 新薬のオリジンを見たものが左下の図。バイオベンチャーが起源となったものが最も多く、40%である。2018年は57%であったので、大幅な割合の減少である。一方で、中小製薬企業は31%となり、前年の13%から大きく伸びている。大手製薬企業は18%で、前年(22%)から多少の減少である。創出国別で見ると、米国は最も多くの新薬を生み出しているが、前年に比べると割合は大きく減少してる(右下の図)。逆に健闘しているのは日本である。
 2019年の新薬は、どの指標を見ても、ここ数年のトレンドとは異なっている。新たな潮流の始まりかもしれない。

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出典:PMDA、FDA、EMA、KEGG、Orenge Book、Google Patentsのデータをもとに、OUVCで作成


[OUVC投資部第三グループ調査役 西角文夫]

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