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第18回「業界展望-創薬」 臨床開発の成否:品目から見た鍵は

当社は「大阪大学の研究成果を活用した事業」を行うベンチャーを投資対象としております。投資候補先の事業が対象とする業界の動向や市場性、成長性等については、当社は、専門的見地から分析を行う担当者を配置して投資検討を行なっています。

この分析担当者の執筆により、随時、サイエンスレポート「業界展望」をお届けしております。今回は第18回です。


 

臨床開発の成否:品目から見た鍵は

 新薬開発の成功率は低く、臨床試験開始から承認に至る率は10%前後である。直近の20年間に承認された品目と開発を中止した品目を分析し、成否に関係する特徴を探った。成功しやすい疾患と、成功しにくい疾患が確かにあり、標的分子の種類にも左右される。敢えて難しいことにチャレンジしているのがベンチャーかもしれない。

 日本、北米、欧州のいずれかに本社を置く企業が創出した新有効成分を含む開発品のうち、1999~2018年に承認された、または、臨床開発が中止されたものを分析対象とした。承認を取得したのは764品目、開発を中止したのは7,333品目で、計8,097品である(図1a)。これらを国別に見てみると、米国が最も多く、次いで、日本、英国の順である(図1b)。また、企業クラスターでは、ベンチャー企業とグローバルな大手製薬企業がほぼ同数の品目数となり、あわせて全体の約70%を占めている(図1c)。日本の多くの企業は中小製薬企業に分類される。

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 次に、臨床開発品の特徴と開発の成否との関係を見てみる。分析はロジスティック回帰分析法を用い、オッズ比と95%信頼区間を算出した(図2)。オッズ比が1とは、その因子が開発の成否に影響しないことを意味する。1より大きければ、その因子が成功に対して正の要因となり、逆に、1より小さければ、その因子を有する品目は中止されやすいと解釈される。

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 対象疾患でオッズ比が有意に高いのは、血液および造血系の疾患・免疫機構の障害のみ。一方、負の要因(中止しやすい因子)は、新生物(腫瘍)、精神・神経系、循環器系、呼吸器系、消化器系および筋骨格系・結合組織の疾患であることが分かる。
 また、標的分子としては、トランスポーターと酵素を標的としたものが成功しやすい。この反面、モダリティでは、遺伝子治療は開発が中止されやすい。抗体と小分子化合物も負の影響を及ぼしている。当然のことながら、他社とライセンス契約が結ばれている品目は、成功しやすい。

 以上のように、開発品目の特定の特徴は臨床開発の成否に関係している。企業の特性(開発費用規模や研究開発の選択と集中度など)をさらに加えて分析すると、より鮮明な鍵が見えてくる。

[OUVC投資部第三グループ調査役 西角文夫]

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